この試合のキーポイントは3つあったと思う。1つは前半の富士通攻撃に対するシルバースター守備の裏目。2つめは3Q開始のキックオフリターン。3つめはシルバースターラン攻撃不発。
シルバースターのリターンから始まる試合。実は殆どのキックがスカイキック(だいたい35ード付近に高いキックを蹴り込み、そこで素早くタックルしてリターンさせない蹴り方。同じ考えでゴロを蹴るとスクイブキックと呼ぶ、で良かったと思うのですが)。両方ともリターナーが強烈だからねえ。
でもここではキャッチした選手が#17中島にピッチバック。結果として自陣48Yardから。
シルバースターは先発QBを#19東野とした。今期観戦をサボっていたのでよく判らないので申し訳ないが、どうも今期はエース波木、セカンド三原、サード東野だったようだが、第3節以降三原が出番無く東野がセカンドに上がったように見える。
それが前節から東野先発。これは、もしかして怪我が原因なのでは?と勘ぐってしまう(波木負傷説は後述する理由による。違っていたらごめんなさい)。
東野と言えばこれから、と言うときに大きな怪我で戦線離脱を余儀なくされ、かつ後輩の有望なQBと先輩の金岡に挟まれ、不遇な運命をたどっていたという印象が強い。しかしこの試合では非常に広い視野と切れ味のいいタイミングパスをピンポイントで決めるという、なかなかすばらしい出来であったと思う。特に開始3連続パス成功はお見事。こりゃ行かれたと思ったくらいだ。ところが、敵陣10Yardでまず躓く。フォルススタートだ。下がってから2回連続ランに出るが、これが止まる。
結果、パスは通すも距離が足りずFG。
では富士通攻撃。自陣38Yardから。こちらは開始ドライブ8プレー中パス2回。オフタックルからオフタックルの間のラン4回(スクランブル1回)オープンのラン2回。大きくゲインしたのは吉田のスクランブルと、直後のQBカウンタードロー。
ここまで終盤戦は中央のランでゲームを構築してきただけに、シルバースターも中は厚い。結果として最後にダウン更新が出来ずにFGとなるも失敗。
次のドライブは、2プレー目のパスの際にホールディングをしてしまったシルバースターが距離足りずにパント。このパントもイリーガルフォーメーションがあり、キックエンドから5ヤードを富士通が選択。これで自陣37Yard。
ここでリバースフェイクを入れたロングパスが秋山にヒット。敵陣36Yard。パスを1度捨てて、金が左オプションピッチ。続いて進士がピッチプレーで左オープンを抜ける。
この時初めて気づいたのだが、シルバースターのLBが、中央に張り付いているので、オープンにいいブロックが出来ると追いつけないのだ。というより、中央で止まってる感が強い。
結果として森ねとがピッチプレーから逆転TDを決める。
返しのドライブでシルバースターは東野のパスを主体に攻める。自陣23ヤードから戸倉へのパスでBall on 33Yard。波武名のラン、野本へのスクリーンパス、藤縄へパスの時にはブリッツが入るも、慌てず投じたパスをうまくDBの前に入ってきゅっし、これで敵陣に入った。が。波武名のランの後、左サイドから守備選手が漏れてきて投げられずサック。ここで再び自陣に戻る。次のプレーで一気にディープに投げるが、なんとターゲットの中島には3人もマークが付いていてインターセプトされそこなう。
さらに間が悪いことに、パントを蹴ったときに誤ってドロップキック(プロレスの跳び蹴りの事ではない。落としたボールがグラウンドについてから蹴るプレーの事)になってしまい、飛距離が出ず。あろうことかシルバースター陣47Yardから富士通の攻撃。
まず大矢に短いパスを通し、次のプレーでブリッツの裏に入ったブレナンにパス。これでBall on 31yard。たまらずタイムアウトを入れたシルバースターを尻目に、金が走り、その後大矢の右ディープのパス。サイドライン際で、外に出ると判断したのかDBの粘りが甘く、大矢が3Yardで芸術的キャッチ。
さすがに奮起したのか森本と進士のランは止まるが、左カウンターロールのフェイクで右オフタックルに金が走り込む。中央を警戒していた為にシルバースターはサイドが手薄になり、ブロッカーにきれいに取られてしまっている。
次のシルバースターのドライブから、QBが波木にスイッチ。直前に東野がタックルされたせいもあってだと思うのだが……おいおい、である。
基本的に波木の驚異は「クイックリリース」と「素早い動きだし」「伸びやかなスクランブル」だと思っている。
瞬時にトップスピードに乗って加速されたら手も足も出ない。
が。
最初のプレーで目を疑った訳である。ここが波木故障説の肝である。
まず、何とかパスしようとしているのである。つまり「走ることは悪いこと」みたいに投げようと必死でレシーバーを捜している。しかし、この日の富士通はパスカバーがかなり出来ていたので、投げられない。そこでようやっと走り出すわけだが、この動きが何とも緩慢で、切れ味がない。
つまり、「怪我で踏ん張りがきかず、スクランブルやキープといった戦術に出ることで怪我を悪化させてしまう」という状況だったのではないだろうか。従って、判断悪くサックされる事1回、ロスタックル1回、スクランブル1回という結果に終わってしまった(とはいえ敵陣39Yardでパント、結果的に3Yardまで押し込めたのだから評価に値する)。
ところがすぐさま進士のオープン、吉田のギブフェイクからのオフタックル、吉田のスクランブルと3回のランで34Yardまで戻される。続いて大矢へのパスでシルバースター陣40Yard。ランを警戒するとLBが上がり目になり、そのぶんセーフティの前が開くという事で、このポスト系は結構使われたと思う。
ラン2回を挟んで米山へのパスが決まり敵陣20yardまで進む。このへんから守備アサイメントが変わったのか、効果的なランにならず、結果としてFGとなる。
返しのドライブ、冒頭に富士通が交代違反をやらかしてシルバースター自陣41Yardから。QBに東野が戻って、パス失敗の後5連続パス成功で敵陣23Yardまで攻め込む。このあたりは守備がプリベント気味だった事もあって、ミドルレンジがよく通った。が、ここで2連続パス失敗(1回目はムーヴして守備をずらそうとするもパスをはたかれ失敗、2回目は花房が落球)。結果としてFGとなる。
この後富士通がパス3回(逆リードで失敗、大矢のアウトパターン、プレナンへのパスを叩かれて失敗)、シルバースターが時間消費で前半を終えることになる。
前半の終わり方に不満があったので、後半はもしかしたらと疑っていたのだが、その疑いを一瞬隠してしまったのが後半のキックオフリターン。何せ金が敵陣7Yardまで運んでしまった上に、パーソナルファウルももらってしまった為である。あっさり、後半開始17秒で18点差。つまり3ポゼッションゲームに持ち込んだのである。
こうなると本来のスタイルならば「ライン戦でじっくり相手にプレッシャーをかけつつパスを通す」というスタイルのシルバースターは苦しくなる。実際、この日はトータル26回26ヤード、1回最長が花房の12ヤードだが本人は5回11ヤードであるからして苦戦ぶりが伝わるだろう。
結果としてキャッチアップ攻撃になったという事もあるが、それでもこの成績はいびつであると思う。
さてそれはおいておき、シルバースターの逆襲である。東野が#82山田にロングパスを通すと一気に敵陣に入り、ラン3回で敵陣25Yard。但し、この時ランプレーに巻き込まれた東野が負傷退場し波木にスイッチ。4thショートで、波木がスニーク。しかし止まってギャンブル失敗。
もし、キックオフで持って行かれていなければ、同じシチュエーションでもFGを狙ったのではないかと思うのだが。
ここからシルバースター守備がシステムを少しいじってきたようで、おそらくLBをブリッツさせるような形で攻めているのだ。ゲインはすれど足踏み。シルバースターもパント。という事で富士通2回、シルバースター1回パントで迎えた3Q8:09からのシルバースターのドライブは、自陣37Yardから。波木のスクランブルと花房へのショベルパスでダウン更新すると、高橋へのパス2回(最初はセイフティ・バルブの位置に、次は決めうち)で敵陣43Yardに入り、ここで橋詰にパスを通し、ロングゲインを奪い18Yard。波武名、高橋とRBへのパスをうまく使って10Yard。
しかしここで花房へのオープンプレーが読まれロス、15Yardまで下がる。ギャンブルで井本へのパスを(正直、井本に震撼した)通し敵陣3Yard。この時点で3Q残り2分切っていた。
ここからシルバースターがランで徹底して攻めるのだが、結果として3Q残り0秒4thダウン1ヤードのギャンブルを富士通守備が防いで失点を防ぐ。
この失点を防いだのは、「ラン攻撃では効果がない」という事を示してしまった。また、この時波木に怪我をさせるわけにはいかないという特殊事情(したがってブーツレッグやスニークは選択できない)も左右したが、ここで完全に気勢をそいでしまった。
とはいえ、自陣1ヤードからの攻撃である。最初2プレーのランでダウン更新はしたものの(多分に時間消費の意図もあったと思われる)、ディレーがあった事もあり、パントでこれが富士通陣42Yardからという絶好の位置。
波木がまず中島にパスを通し32Yard 。次のパスが失敗でその次がスローバックのスクリーン。というより、サックされかかって無茶投げしたらスクリーンになったというか。
ここでなんとQBが東野にスイッチ。波木が怪我でもしたのか?と思うも試合は進む。
最初戸倉へのパスははじいてしまい失敗するも、次のプレーは中島のど根性、ブリッツで東野のパスが短くなるも戻ってきてすくい上げてDBふりきりTD。しかもトラポンは2ポイントで橋詰へのアクロス。
正直、あの3Q冒頭のシルバースターがFGだったら、ここで1TD差だったんだよね。だから、心底シルバースターの底力に震撼したわさ。
が、この返しのキックオフが富士通陣43Yard。そしてシルバースター痛恨のオフサイド。施行はキックエンドから5ヤード進むので、Ball on 48Yard。まず出原が松林にショートパスを通しシルバースター陣進入。進士が持ち敵陣43Yard。ここで森本がワイルドキャットからダイブ。41Yard。たまらずシルバースターは守備のタイ会うと。後半2回目
続いての吉田のパスで27Yard、続いてDLに入られた中で金が粘って25Yard、進士へのギブフェイクかに右オプションピッチで最初にフェイクした進士へ。進士が密集を抜けて左オープンを激走、吉田の好ブロックもあって1yard。
仕上げはワイルドキャットからねじ込んだ森本のラン。
ここから富士通につまらない反則が続くが、TDされたとはいえ時間をを多少使わせ、オンサイドを押さえる。
ここでもつまらないミスが。ドライブしてBall on 28Yard。4thでFGを狙うも蹴れず、ホルダーがスクランブルしてギャンブル失敗。
結局ここで攻撃権を3分も残してしまう(とはいえ3分しか残さなかったのが2ポゼッションゲームの時にはキモになる)。
正直ここから神かがった東野のパスと神がかった富士通パス守備の駆け引きで、富士通陣31Yardまで進むも、中島へのパス2回失敗となり、ギャンブル。ブリッツにコントロールを乱したか東野のパスがターンボールになりギャンブル失敗となったのである。
あとは時間を食って富士通が勝利を納めたのである。
でね。冒頭にも書いたけど、基本としては富士通のラン攻撃にインサイドLBが何も出来なかったというのが痛いシルバースターは、さらにランをねちっこく出せなかった為に富士通守備を疲れさせることも出来ず、途中からは常に先手を取られ、焦りの中で試合をせざるを得なかったのが問題ではないかと思うのである。
しかも、本来は準備万端だった筈の後半開始の守備機会が、自陣3ヤードでは見せ場もない。ここは残念だったと思う。
とにかく、この試合は実力がっぷり四つだったと思うが、不思議とシルバースターが勝つ気がしなかったのは何故だろう。何となく戦略ミスのような気もするのだが。
とにかく、決勝進出したチームは、怪我人が万全な状態に回復することを、切に願うのであります。