非破壊自炊に挑戦(7)その他、個人的な意見として

一応今回、非破壊自炊のやりかたについて長々と書いてみましたが、ここで自炊行為について個人的な姿勢を掲げておきます。

あくまで自炊行為は私的複製権の行使の一形態に過ぎず、音楽のように持ち歩きメディアに転送することと同列の行為だと考えています。
ですから、本を裁断しようがしまいが、それが個人の勝手だという理屈は否定しません。古本屋に売るのと同じですからね。
ただ、正直に言ってしまうと「新刊本を裁断して」とか言うのはもう心得違いだと思うんですよ。少なくともこのご時世(koboが出てから、大手出版社の新刊の同時電子書籍化というのは必然に近い形)、携帯利便性を問うなら新刊本を買うのでは無く新刊電子書籍を買えばいいし、また作家に対してそれを訴えればいい訳ですよ。

本を読んだ事によって、その書籍と共有した時間というものが読書価値である、という個人的な意見の元においては、ツールはともかく、一度手にした物を故意に破壊するという現在の破壊自炊については、あまりにも違和感ありすぎだし、それははっきり行って金を溝に捨てる行為だと思うのですよ(本に投資したのが、ではなく、機材に投資したことが、です)。

紙の本には、電子書籍には出来ない仕掛けがある訳です。正直、どう頑張ったって泡坂妻夫の仕掛け本(『しあわせの書』と『生者と死者』)は、固定レイアウトでしか再現できないし(ってか『生者と死者』に至っては絶対に無理)。
逆に電子書籍には電子書籍にしか出来ないことがある訳で、でも残念ながらそういうものはまだ表に出てきてないですよね(別に音楽埋め込みとかそーゆーことを行っている訳では無い。そこ、誤解しないでね)。

あくまで著作に対する利益は著作者に帰属し、編集権というのは著作者と編集者の間で取り交わされる契約だと思っています(現在は、製造コスト・流通在庫コストを出版社側が負担するビジネスモデルである為、編集者の上位概念である出版社主体ですけどね)。
従って電子書籍と紙の書籍の価格差が殆ど無い現状は、ちょっと違うような気がします。
自炊行為というのは、あくまでこの「編集権」について作者の了解無く行う行為であり、そこに他者が関与するというのは好ましいことではありません。
従って、自炊代行業者のような所にお金を落とすのは、個人的には「全くもって言語道断」であり、「そんな事までして本読む必要ないんだから、そもそも本を買う資格すら無いんじゃ無いの?」と思うのです。とっとと電子版で買えばいいし、電子版を出さない作家に対して不買運動すればいいだけでしょ、と。

ですから、あくまで今回の作成プロセスの公開については、「ちょっと時間かかるけど、自分たちで出来るじゃん。自分の責任で楽しみたいなら自分でやればいいじゃん」という話なんだよね、という事をちょっとでも感じて貰えたと思った訳です。

最近、なんか小説に物足りなさを感じるんですよね。
ラノベ・キャラノベのようなのが売れているというのが、この事態を象徴してますけど、なんか世代間断絶みたいなものを感じますよ。
もっと実のある読書ガイドとか作っていかないといけないと思うんですね。「ああ、これ、読んでみたい」と思わせるようなブックガイドが必要だと。

その為にも、読みにくくなった古典・中堅作品を積極的に電子ドキュメント化していかないとね。
そういう作品を一手に電子化・販売窓口・原盤管理・オンデマンド出版等を手がける出版社を、推理作家協会とSF作家協会と文芸作家協会は共同で立ち上げてもいいんじゃない?
※あくまで絶版本・品切れ本の復活が目的。だから版元と喧嘩した佐藤亜紀とか森雅裕とかも関係なく拾っていく。もし権利団体ともめたままなら、その来歴と互いの言い分を掲載する形で発表するなど、いろんな事が出来るよね。

そういう出版社出来たら、提案者として俺雇ってよ。もう、しゃにむに頑張っちゃうからさ。

非破壊自炊に挑戦(6)外字・Epub用処理・mobi生成

さて外字の話題です。
外字というと、Windows3.1の頃に色々と外字エディタを使って外字を大量に作ったり、会社のシンボルマークを強引に一字TTFフォントにしたりした経験があるんですが、まあ外字エディタでは「そのPC限定」だというので、フォントファイル生成が一番ましなのかな、と。

ところでEPUB3の規格を読む限り、外字の扱いは次の通りとなっています。

  • 普通に文字データで表現する。
  • OpenTypeフォントかWOFFフォントを埋め込む。
  • SVGフォントを埋め込む。
  • 画像で処理する
  • 説明テキストで表現する

をぃをぃ。「ふつーにもじでーたでひょうげんする」って何だよ。→「ネ申」(カタカナの「ネ」と漢字の「申」で「神」という漢字を示すこと)みたいなこと? だとしたらこれ縦書きでは無理ですわ。
ちなみに異体字表現ルールとしては「標準字体」を割り当てる事がこの方法に挙げられます。

OpenTypeフォントとWOFFフォントは、どちらも俗に「WEBフォント」と呼ばれる物。EPUB3ではTIFFと共に標準で表現できるように規格されていますが、原則としてUnicode上にその文字に予約されたコードが割り当てられていることが必須です。従って、全くない連中は「コード読み替え」などをしなくてはならず、同じ文字の異体字の外字が複数あると、結構管理が大変(ファィルの名前付け規則として推奨されているのがUnicode名を使うこと、となっているので)。
フォントエディタで日本語対応(生成できる文字が、ではなくメニューやヘルプが)されている物が有償の物しか無いのが残念。また、縦書き横書きなどの指定が大変。トライしたものの途中で放棄してしまいました。

SVGフォントというのは、ベクタデータ画像ファイルであるSVG形式の画像をフォントとして扱わせる方法。ちなみにSVG形式でのベクタデータでの外字作成と文字コード割り付けについては、GlyphWikiでテスト生成可能です。
但し、これはEPUB3の仕様上MustではなくMay、つまり「読めるようにしといたらいいとおもうけどね」的状態なので、リーダーソフト・ハードが対応しているかどうかで話が変わります。ちなみに、SVG画像として埋め込むことは出来ましたが、フォントとして引っ張ることには失敗しました。

画像で処理する、というのはmobiファイルの推奨形式で、Amazonの文書見ても他の方法は触れてません。JPEGかPNG形式、しかも128×128ドット以上8ビット(256色)透過png推奨との事。

説明テキストとは「つちへんに州」とか、括弧書きで記述する方法。小説でこれはリズム崩すからねえ。

今回の目的はmobiファイル変換なので、ちょっと配置上気にはなるけれど、画像形式を選択します。
で、今回はフツーにお絵かきソフトで、似たような部首の文字をラスタデータ化し、レイヤで調整しつつ作成しました。
この時、やや太め(明朝の太字、128×128の場合、100ポイントで作成)にした上で、微少な修正(縮小されたときに線がつぶれすぎないようにする)を加えます。

今回作成したのは以下の4文字+異体字1つです。

(この字だけは、どうしても文字サイズによっては字が潰れます) 拳の異体字に至っては、手元にあった異本すべてと照合したところ、すべてこの字を使っていた為、標準字体を使いたくなくて、無理矢理作りました。

ああそうそう、この字があるかどうかはCHISE IDS Findで検索するといいです。もしかしたらそこでGlyphWikiで公式に生成された字データが出てくるかも知れませんよ。ここに挙げた物のうち「拳」の異体字以外は、ありませんでしたけど。

なお出来上がった文字画像は、英字+数字のファイル名で保存。たとえば「U62F3.png」はOKですが、「U+62F3.png」はアウト。Epubでは表示できますが、mobiでは表示出来ず画像記号になってしまいました。

さて、これらをどうやって表現させるかというと、XMLっつうかHTMLの<img>タグ、ではあるのですが、そのままでは文字サイズが固定されてしまいます。そこでCSS(スタイルシート)をいじります。

まず、ルール上、epub3の画像はimagesフォルダに保存する事が原則です。画像ファイルをFUSEe画面上にドラッグ&ドロップすると、勝手にimagesフォルダに格納されます。

で、次に修正するのはCSSの設定ファィルです。
CSSは以下の物が出来ているはずです。
・coverstyle.css:カバーページ用のスタイルシート
・stylecommon.css:標準のスタイルシート
・stylevartical.css:縦書きの設定用スタイルシート
・stylehrizontal.css:横書きの設定用スタイルシート
一応、専用に別途スタイルシート埋め込んでもいいんですが、色々トライした結果stylecommom.cssに追加記載するのが一番わかりやすいという事が変わりました。
なお、WEBのCSSと違って、自分でスタイル名を勝手に追加できる訳ではないようです。使えるタグについては全部調べてませんけど。
ではstylecommon.cssの一番最後に以下のように追記します。

 img.gaiji {
    width: 1em;
    hight: 1em;
    display: inline;
    vertical-align: text-bottom;
}

ここで注意したいのが、EPUBとmobiで文字位置の解釈が違うらしいという事。mobiの場合一番最後の「vertical-align: text-bottom;」があると、図の位置が派手にずれました(他の所で悪さしている指示があったのかも知れませんけど)。しかしこれがないとEPUBでは微妙に文字の位置が右寄りにずれます。
ですので、最終目的にあわせて入れるいれないを判断して調整すると良いようです。
また、このCSSのお陰で、画像サイズは文字サイズにフィックスされますので、本文の方に入れるimgタグでは特にサイズ指定しません。

で、本文はいつも一括変換かけてますが、
<img alt="" class="gaiji" src="../images/U62F3.png" />
(拳の異体字の場合です。当然ながら、それぞれの外字については、そのファイル名にしないと駄目ですよ)
のようにimgタグを埋め込みます。
一応判っているとは思いますが、全XMLファイルについて外字の埋め込みしないと駄目ですからね。
※一応、最初に変更内容を書いておいた一太郎ファイルに、CSSの内容とIMGタグは書いておいた方が。EPUB再作成したら飛びますからね。

最後に目次。

実は生成された目次ファイルはインデントではなく、スペース埋めで段差がついてます。これは表示上みっともないので、<a href=>の記述とスペースの位置を切り替えてください。今回、インデント処理はしませんでした。

こうして出来上がったファイルをEPUB3形式ではき出してください。
出来上がったEPUBファイルは、そのままEpubリーダーで読むことが出来ます(一部のリーダーではなんか変な表示になりますけど、国産品なら大丈夫でしょう)。
Kindleで読みたい場合は、FUSEeからでも出力する方法(KindleGenというプログラムをアマゾン英語サイトから入手して、そのパスを登録すれば出来ます)がありますが、Kindle PreviewerにEPUBファイルをドラッグ&ドロップすると、「Compiled-<EPUBファイル名>」というフォルダを生成し、その中にmobiファイルが出来てます。
そのMobiファイルをリネームして、Kindleに転送すると「アイテム一覧」から「ドキュメント」あるいは「すべてのアイテム」をチェックすると、読むことが出来るようになります。