もっと酷い話として、実話を元にした紀田順一郎『魔術的な急斜面』に出ているデパートの古書市の騒動があった。作中では高田馬場か何かにされているが、実際は池袋西武催事場の古書市の初回。人気の高い稀覯本がカタログに出ていたのでマニアが開店前から行列、開店の扉が開くのすら待ちきれず(確か地下西武池袋口のガラス扉が壊れたんじゃなかったかな)エレベーターもエスカレーターも殺気だったおっさんでパニックになった挙げ句売り場でも暴動寸前で、よしゃいいのにパニクった店番が先頭×番目か何かにいた顔見知りと目が合ったその人の買い上げって宣言して大乱闘になった、んだっけか。ちなみこれ以降様々なデパート催事場の古書市では「事前はがき抽選」が導入されてる。
※今のヲタクを小馬鹿にする知識人はこの時の騒動が「会社や店を休んだ中年～初老の書狂人」で、しかも比較的知識人も紛れていた事を知っておくべきだ。

註：現在『魔術的な急斜面』は一度品切れ絶版の後、『ビブリア古書堂』シリーズのブームの際に『古書収集十番勝負』として新装再版文庫化されてます。そういう意味では『鹿の幻影』も改題されてるんだよね。このブームの時に改題されなかった文庫は『古本屋探偵の事件簿』だけだけど、そもそもが『幻書辞典』(三一書房時のタイトル。文春文庫では『古本屋探偵登場』)と『われ巷にて殺されん』の合本なんで……。

註：百貨店催事の古書市を最初にやったのは、高田馬場駅前の百貨店(BIGBOXではない)で、この時やはり大パニックになり「待機列」の概念が出来たそうだ。その時の反省で事前カタログが導入された筈の池袋西武古本市の初回(それまでの古書会館ベースの即売会ではなく、各店舗が手を挙げて参加するタイプだった事。規模的に言えば神保町の「秋の古本祭り」と同等規模で、かつエリアを跨いで有名どころが店を出した訳です)の惨状－ガラスショーケースごしの店舗ごと会計だったので、店番が恐怖するのも判る－だった、と紀田さんか誰かの本で読んだ。