Jリーグ・川淵幻想について(2)

9月にFacebookのタイムラインに連載したものの2回目です。

本文中で触れているように、Jリーグ開幕前にNFLを視察したのは、アメフトに理解があるからではなく、スポーツビジネスとして極めて特徴的な閉鎖システムで莫大な利益を上げるシステムを構築したから、ビジネス的な視点で行われた物です。
また、アメリカのカレッジの収益システムに川淵さんが言及していないのは、運営が多額の寄付金に依存しているという事もあると思いますけどね。

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ここで誤解をしてはいけないのは、川淵三郎が無能であるという偏向的誤解である。

川淵三郎は、優秀なビジネス指導者である。後にセルジオ越後に嫌味を言われた放映権料システム(リーグ一括管理・再配布)は、世界でも恐らくJリーグとNFLでしか採用していないと思われる。
しかしNFLは、その莫大な放映権料収入で、それこそリーグ総資産ではリーガやプレミアの上を行く。全てのスタジアムが5万人以上の規模のリーグで、チームが破綻することないように出来ているNFLを参考にしたのは、実にビジネス的才覚であると言える。
※なので、川淵NFLファン説なんぞというトンデモ理論は成立しない。彼はスポーツビジネスのモデルとしてとしてNFLを研究しただけである。だから詳しいのであって、少なくとも「京大が日本一を争っているようでは駄目」などという発言をするのはアメフト文化を理解していない発言なのである。そして、彼はカレッジフットボールの収益体制については興味を示していない。なぜならサッカー文化の「地域クラブ」とは相反する概念だから。

なので、彼が成功するときは「方向性は決まっていて、それを遂行する為に馬力を掛けるとき」なのである。
それはBリークでも全く変わりなく、彼はもつれた糸を強制的に繋いで整えた、だけなのだ。

さて、ここまで紆余曲折してきたJリーグであるが、果たして本当に成功したのか、というと、ちょっと待てなのである。
元々こじれた糸を解して、方針を決めた事で地域密着という縛りが付いた為に、地元自治体支援の限界に至るチームも複数あるし、そもそもJ3が設立されなければ地域リーグで足踏みして解散危機だったチームもある。上位のチームだって未だに親企業からの広告収入に頼っているところが多い。

例えば大分。ここはトリニータだけでなくバスケもバレーもチームがある。ある意味無理矢理作ったチームであり、定着させるために「強いチームを作って後から収入を稼いで安定化させる」という戦略をとった。結果、W杯用に大分ドーム作ったはいいが芝がボロボロになって自分たちも怪我人を生み、失速して2部降格。おかげで大借金だけが残り社長は追放。現在もJ3でもがき苦しんでいる。
例えば鹿児島。そもそも地域リークで2チームがそれぞれJ参入を狙っていたが、その為に戦力分散を招いて地域リーグ止まり。両チームが維持出来なくなっているのに感情的なもつれから市場規模も考えずにやってきて、県から最後通牒を受けて統合。その後も全国には行けずに苦しんでいた所J3特赦でJ入り。(これは福島ユナイテッドも似たような経過)
例えば山口。ここもJ3特赦だが、そもそも国体向け競技力強化チームだったので、バックアップスポンサーが弱い。
例えば北九州。ここはJ2ライセンスに腹を立てた監督がチームを見限った。そうまでしないと地域が動いてスタジアムを作ってくれない。
果たして、この状態を成功したと言って良いのだろうか?

スタジアム使用料が馬鹿高い札幌ドームや横浜国際、優勝しても優勝しても市から相手にされない広島……
道半ばと言うには、もう四半世紀も過ぎたのだ。理由になっていない。
ましてや、J3特赦を受ける前に地域リーグで無理して体力が無くなって潰えていったチームがいくつあるのだろう。
そういった失敗事例にこそ学ぶことはあれど、成功した幸せな、たかだか20程度のチームの事だけを語るのは、あまりにおかしな話じゃないだろうか。
(3に続く)